不完全な連続体

わたしたちは、時間や現象という「連続」した流れの中(空間)に存在しています。連続することで、点から線、面、空間となり、次元を超えて世界を構築し、何次元までも続いていくことができます。

 

「なぜ、空は青いのだろうか?」

この世界を生きる一人の人間として、何かものを見るたびに漠然とした疑問を抱いていました。科学で説明されるものの外にある、「雰囲気」や「様子」がなんであるのか。といった感覚を持ち続けてきた中、ドイツで数学に出会い、数学者との関わりの中でずっと抱いてきた疑問の答えが見つかりました。

 

宇宙や地球は、目に見えないミクロな幾何学的構造によって成り立ち、わたしたちの目に見えるマクロの連続的な自然現象となって現れています。それらは多数のパターンから成り立ち、多くの秩序も存在しています。それを解明してきたのが数学であったのだと、「集合」、「連続」、「群」などの概念により感じました。

 

以来、自然現象の背景や見えないシステムに、幾何学的な構造や連続的な性質があるということが、わたしの作品の根幹のテーマとなりました。と同時に、連続する中で起こる変異やエラーなどで、予測せず新たな物質が生まれたり、崩壊したりしながら連続する形を変えて続いてきました。

 

連続模様は、主に「敷き詰め模様」と言われる平面充填(テセレーション)の理論で表現することが多く、それらは、アルハンブラ宮殿の内壁のようなシンメトリーを基本とした形の連続模様として広く知られています。しかし、私の作品はそれらのシステムに則った「数学的な模様」としての表現だけではなく、「数学の概念を感覚的に捉えた視覚表現」と言うことができます。

 

近年制作した連続する作品は、均一に続いていくのではなく、連続性の中に「ズレ、変則、欠如」を感覚的に取り込み、連続した模様を平面や空間に視覚表現として展開していくことで、この世界の中で起こる不完全な連続性を重ねています。これをわたしは「CONTINUUM |連続体」として提示しています。

 

特徴的である「ズレ、変則、欠如」などのアシンメトリックな感覚は、「完璧ではない形だからこそ、続きがある」という、日本古来の美意識が知らぬうちに「未完成だから次につながる」という意識として、自分の中に根付いたのだと、徒然草、第82節を読み、実感していました。「不具なるこそよけれ」といった「不完全である美意識」についての記述があり、美意識として「完璧ではない」ことが文化、歴史、建築の世界においても定着していました。この感覚は、左右対象が完璧な幾何学の世界(シンメトリー)をヨーロッパで多く見たことで、より得た感覚であり、作品の特徴的な部分として反映されています。

 

今回モチーフとしている数学の世界にある空間充填曲線で代表的なヒルベルト曲線は、「点」が移動してできる「線」が折れ曲がり連続することで、「面」、「空間」を埋めていく連続性の理論です。展示空間全体を線や色で辿り体感し、見えない世界を想像していただけたら幸いです。

 

この展示空間は、これからも続くこの世界を構成する不完全な連続体としての一部であり、終わらない連続する世界の断片なのです。

​中嶋 浩子